ホテルは泊まるところ。一般的にはそう思われているかもしれませんが、それだけではありません。ホテルでは、結婚式をはじめとしたイベント・パーティー、新しい製品の発表会や芸能人のディナーショーなど、様々なサービスが行われています。
どのサービスにも共通して必要なのが「どうしたらお客様に満足していただけるか」を考えて行動するホスピタリティ精神です。丁寧な対応をするなど、基礎的な部分は決まり事(=ルール、マナー)として覚えれば良いかもしれません。しかし、お客様は一人ひとり違った人間です。形通りの決まりきった対応では、すべてのお客様に同じレベルで満足をして頂くことはできません。
一流のホスピタリティ精神を持った人物というのは、お客様一人ひとりに真剣に向き合い、「よりお客様に喜んでもらえるよう」自分から率先して動ける人を指します。お客様に声をかけられてから動くのではなく、問題を抱えていそうなお客様には自分から話しかける姿勢も必要です。お客様の表情やしぐさから助けを必要としているのかを感じ取るには、観察力に優れていることも求められます。「ひと」が好きな人に向いている仕事といえるでしょう。
ホスピタリティ精神が求められる仕事として良く例に挙げられる「ホテル・ブライダル業界」の仕事を少しだけご紹介します。
ホテルのお仕事
宿泊部門
フロント
フロントの主な仕事は、以下の通りです。
・お客様の宿泊予約の対応(別に予約専門部署がある施設もあります)
・お客様のチェックイン・チェックアウトの応対
・お客様にホテル内サービスなどの情報を提供
・会計業務
ドアスタッフ・ベルスタッフとともに、お客様のホテルに対する印象が決まることの多いポジションなので、正しい言葉遣いやマナーはもちろん、計算処理能力や臨機応変に対応するスキルが求められます。海外からのお客様も増えてきているので語学力も鍛えておくと良いでしょう。
ドアスタッフ
ドアスタッフは、車寄せのあるホテルの玄関でお客様をお迎えし、お見送りするポジションです。お客様をフロントやロビーまでご案内し、お預かりした荷物をベルスタッフに引き継ぐほか、ホテルの玄関周辺の警備や車の誘導、入庫・出庫の代行を行うこともあります。
ドアスタッフは、ホテルを訪れたお客様が最初に顔を合わせる職種なので、ホテルの第一印象を決定付けるポジションともいえます。正しい言葉遣いやマナー、臨機応変に対応する力、記憶力が求められます。
ベルスタッフ
ベルスタッフは、ドアスタッフから引き継ぐ形でお客様の荷物をお預かりしてフロントまで運搬するほか、チェックインを済ませたお客様の客室までのご案内や、会議・パーティーなどの会場までの誘導や説明を行います。
特に団体のお客様は荷物の量も多くなるので、取り違えなどのミスがないように注意が必要です。体力、正確さ、コミュニケーション能力など幅広いスキルが求められます。
コンシェルジュ
コンシェルジュは、お客様の様々な要望に応える職種です。ホテル内での要望に限らず、周辺の観光地やレストラン、交通機関などを紹介するほか、チケットの予約や手配を行うこともあります。お客様の要望を正確に汲み取る必要があるので、コミュニケーション能力や語学力、情報収集能力、ホスピタリティ精神などが求められます。
お客様が希望されるレストランの予約が取れないなど、要望に応えられない場合も、次善のプランを提案するなど、お客様が満足できるように努めます。
コンシェルジュは、ロビーにある専用カウンターですべてのお客様に対応します。職務内容は似ていますが、高級ホテルのグレードの高い部屋をご利用されるお客様専属の客室係として、バトラーという職種もあります。
ハウスキーパー(客室清掃係)
ハウスキーパーは、客室を清潔に保ち不備がないように保つ仕事です。清掃や換気、ベッドメイキング、備品の補充、お客様の忘れ物がないかの確認などの様々な業務を、お客様のチェックインまでの限られた時間で、丁寧かつスピーディーに行う必要があります。
お客様には、客室が清潔で快適であることは当たり前と思われています。そのためホテルの評価を落とさないようにするためにも、ハウスキーパーの業務は大切です。
目配り・気配りや、作業を進める力、体力が求められます。
料飲・宴会部門
調理スタッフ
朝食、ランチ、ディナー、宴会、結婚披露宴など、目的に合わせて様々な食事のメニューを考え、美味しい料理を調理する仕事です。
食事は、ホテル選びの大きな基準となることも多く、たいへん重要な要素といえます。ホテルによって違いはありますが、直営レストラン担当、宴会料理担当と部署が分かれていることが多いようです。
調理師・製菓衛生師などの資格があると良いでしょう。
料飲スタッフ
ホテル直営のレストラン・バーなどで接客を担当する仕事です。受付やご案内する席の決定などのコントロールを行うレセプショニストや、料理の説明や提供などを行うウェイター/ウェイトレスなどの仕事があります。お客様の要望や質問に素早く対応できるよう、料理・素材・ドリンクなどへの深い知識が求められます。
宴会スタッフ
会議、宴会などのイベントを円滑に進めることが主な役割です。会場の設営をはじめ、イベント中の食事や飲み物のサービス、会場の片付けまでを行います。お客様の要望に応じて会場内のレイアウトを考え、装飾や舞台設備の設定を行うこともあります。
クローク
イベント会場の外で来場者の手荷物やコートなどを預かる仕事です。開場直前やイベント終了直後の短い時間にお客様が集中するため、ミスなくスムーズに対応するためにもチームワークが大切です。
管理部門
施設管理
お客様がホテルに快適に滞在できるよう、施設を管理する仕事です。
具体的にはエレベーターや空調・水道などの設備管理(設備の点検、メンテナンス)、ホテル内を清潔に保つ清掃管理(廃棄物の分別、処理)、セキュリティや消防設備などの保安管理(防災、防犯設備の点検、メンテナンス)などを行います。
電気・水道・ビル管理などの資格があると良いでしょう。
セールス
ツアーで宿泊や昼食会場に使ってもらう、会議や記者会見に使ってもらうなど、ホテルの売り上げを伸ばすため、旅行会社や企業に宿泊や宴会のプランを持ち込み、営業活動を行う仕事です。交渉能力、コミュニケーション能力、世の中のトレンドを捉える力などが求められます。
ブライダルのお仕事
ブライダル部門
ウェディングプランナー
ウェディングプランナーは、新郎新婦の「こんな式にしたい」という漠然とした要望を形にする仕事です。
チャペルなどの結婚式場や披露宴会場を案内したり、写真や映像などで式当日の雰囲気を体験してもらったりして、自社の会場の魅力を知ってもらい、結婚式の会場として選んでもらうのが最初の仕事になります。
自社での式が決まった後は、予算や演出の希望などを聞き取り、新郎新婦の希望に沿った挙式プランを作成します。ウェディングプランナーはメイク・ドレス・フラワーなど社内外の専門スタッフとの綿密な打ち合わせも必要になるため、コミュニケーション能力や交渉能力も求められます。
結婚式当日は全体の進行管理を担当します。
ドレスコーディネーター
主にウェディングドレスなどの新婦の衣装をコーディネートします。
新婦の好みや似あうスタイルなど、ドレスに関する知識を元に提案し、相談に乗ります。希望があれば、新郎や親族の衣装の担当もします。
ドレスだけでなく、衣装に合うブーケや小物、アクセサリーなどの提案を行うこともあります。色彩やファッションに関する幅広い知識が必要です。
ブライダルヘアメイクアーティスト
新郎新婦のヘアスタイリングやメイクを担当します。最近はネイルケアやネイルアートまでセットになっていることも多いようです。
挙式・披露宴という特別な環境で映えるメイク・ヘアメイクの技術が求められます。また、和装に合うメイクの知識や技術も必要です。
ブライダルエステティシャン
結婚式を控えた新婦にエステティックのサービスをする仕事です。主にドレスを着た時に露出するする部分を中心に美肌エステを行います。
フラワースタイリスト(フラワーコーディネーター)
結婚式場の生花の装飾やブーケのデザインなどを行う仕事です。装飾のお花が披露宴会場の印象に与える影響は大きなものなので、予算の許す範囲で華やかになるように装飾を行います。新郎新婦の希望するイメージ通りのアレンジメントを実現させるためには、要望を引き出す接客力が必要になります。
音響スタッフ・照明スタッフ
結婚式場の音響・照明を担当するスタッフです。入場・花束贈呈など、シーンに合わせた楽曲や明かりの調整などで全体の雰囲気を演出します。
司会者
結婚式の数だけ希望の演出があるため、しっかり新郎新婦からヒアリングし滞りなく式を進行させていく事が大切な仕事です。アクシデントに柔軟に対応できる能力や、シーンに合わせた雰囲気作りなど、司会者の技量によって結婚式の印象も決まるといっても過言ではありません。挙式・披露宴を素敵な思い出にするために、失敗は許されない責任ある仕事です。
アテンダー(介添人)
新郎新婦が結婚式場に着いてから披露宴を終えるまでの間、身の回りのお世話をする介添人です。進行の手順の確認や新婦のドレスの裾を持ったりお辞儀のタイミングを知らせたりと、新郎新婦のすぐ側でサポートをします。
専任スタッフがいる場合とブライダルコーディネーターが兼任する場合があります。