「歯科衛生士ってどんな仕事?」と聞かれたら皆さんはどう答えますか?
多くの人が「歯科医院の看護師さん」と答えるのではないでしょうか。
おおまかにいえばそれで合っていますが、それではなぜ歯科医院で働く人は「看護師」ではないのでしょう?まず前提として、人間を診療・治療する人は医師と歯科医師に分かれています。医師は内科や外科・産婦人科など多くの診療科目がありますが、すべて「医師」です。しかし「歯科診療」だけは「歯科医師」の仕事として独立しています。
それだけ、歯科診療には特別な知識や技術が求められているということになります。
そのため看護師ではなく、歯科に特化した特別な教育を受けた歯科衛生士が、歯科医院では働いているのです。
歯科衛生士の仕事
歯科衛生士の仕事は「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」の3つに分けられていて、それぞれ歯科に関する高い専門知識や技術が必要となります。
歯科衛生士と間違えられることが多い仕事に「歯科助手」がありますが、歯科衛生士が国家資格であるのに対し、歯科助手には資格は必要ありません。そのため、歯科助手には医療行為を行うことが許されていません。
それでは、歯科衛生士の主な3つの仕事を具体的に見てみましょう。
①歯科予防処置
「口の中の健康が全身の健康に大きく影響する」という言葉を聞いたことはありませんか?これは近年、研究により明らかになったことで、歯科医院には「虫歯の治療」だけではなく、「虫歯や歯周病の予防」の役割も期待されています。
歯科衛生士は歯科予防処置の専門家でもあり「歯垢・歯石の除去」「フッ素の塗布」などを行うことにより、口内を健康に保っているのです。
②歯科診療の補助
「歯型を取る」「口腔機能訓練」「仮歯の調整」などの行為を歯科医師以外のスタッフから受けたことがある人も多いのではないでしょうか?歯科医師以外に直接患者さんの口内に触れて診療行為ができるのは歯科衛生士だけなので、医院によって差はありますが、上記の行為は主に歯科衛生士に任されています。
「歯を削る」「抜歯を行う」「レントゲン撮影」などの歯科医師にしか許されていない行為を除き、多くの業務を歯科医師の指示のもとで行うことができるのが歯科衛生士になります。
③歯科保健指導
直接患者さんの口内のケアをする「歯科予防処置」と違って、歯科保健指導とは「歯磨き指導」や「口腔ケア教育」など全身と口腔内の状態把握を行うことを指します。
歯科医院だけでなく、保育園や小学校などで行うことも多く、こうした出張指導・教育に携わる歯科衛生士は、主に市区町村が運営する保健センターや保健所などで働いています。
歯磨きだけでは口の健康を保つことはできません。生活習慣や食事のとり方などの改善指導も歯科衛生士の重要な仕事といえます。
歯科衛生士になる方法
歯科衛生士として働くには、歯科衛生士の国家試験に合格する必要があります。国家試験受験には、高校卒業後3年制以上の歯科衛生士養成校(大学、短大、専門学校)で学ぶ必要があります。
歯科衛生士の国家試験合格率は、他の医療系国家資格と比べ比較的高い水準にあり、近年は93~96%前後となっています。 なお、歯科衛生士は女性の仕事という印象が強いと思いますが、2014年に法律が変わり、男性を受け入れる養成校も増えてきました。
歯科衛生士の働く場所・現状
歯科衛生士9割以上が一般の歯科医院で働いています。総合病院の歯科が約5%、残りが県や市町村の保健関連施設・介護施設や歯科衛生士養成校などになります。
歯科医院から養成校への求人は多く、多くの養成校で20倍を超えています。2020年度の国政調査によると歯科医院一か所につき歯科衛生士は1.9人となっており、歯科衛生士はまだまだ不足おり、今後も求められる仕事といえます。
給与面では、歯科衛生士の初任給の平均は約24万円です。(医療系求人サイト調べ)
一方、一般大学卒の初任給の平均は21万円となっています。このように、歯科衛生士は他の一般的な職業に比べて比較的高い初任給を得ることができる職業の一つです。
歯科衛生士は女性が圧倒的に多く、男性はまだ1%に満たない数しかいません。女性の場合、結婚・出産などによる一時的な離職も考えなければならないケースもあります。
上記の通り、歯科衛生士を求めている歯科医師は多いため、歯科衛生士は比較的復職がしやすい仕事といえます。実際、30代~50代で歯科衛生士として働いている人も多く、歯科衛生士は一生涯にわたり長く勤めることのできる仕事といえます。
また5年以上歯科衛生士として働くとケアマネジャーの受験資格を得られるので、介護施設で高齢者の口腔ケアに携わるなど、福祉の分野に活躍の場を広げる歯科衛生士もいます。
歯科医院で働くスタッフのちがい
歯科医師
歯を削る・詰め物をする・麻酔の注射をする・歯肉を切開する・抜歯をするなどの、歯科医師にしか許されていない「絶対的歯科医行為」を行うことができます。6年制の大学で学び、国家試験に合格する必要があります。
歯科衛生士
上記の「絶対的歯科医行為」を除く、歯型の採取・仮歯の調整・表面麻酔薬の塗布などの医療行為や歯科予防処置・歯科保健指導を、歯科医師の指示のもとで行うことができます。3年制以上の養成校で学び、国家試験に合格する必要があります。
歯科助手
受付・会計・清掃・器具の洗浄・片付け・患者さんの口内に触れない範囲の簡単な診療補助など、歯科診療以外の事務作業などを行います。歯科助手養成校もありますが、医療行為を行わない仕事なので、高校卒業と同時に歯科医院に就職することも可能です。
※歯科医院によって仕事の割り振りには違いがあります。歯科医師が少ない医院では歯科衛生士の医療行為が多くなり、歯科助手(歯科医療事務員)が少ない医院では歯科衛生士の事務的な作業が多くなる傾向があります。