動物に関連する仕事には、トリマーやペットショップスタッフなどのペット系統、動物園や水族館・観光牧場スタッフなどの飼育展示系統、酪農などの畜産系統、獣医などの医療系統があります。動物と触れ合うことを苦にしないことは大前提ですが、好きなだけでは務まらない部分もあります。また、職種によっては資格を取得するのが難しいもの、求人が少ないものなど、なりたくても簡単にはなれない仕事もあり、将来を見据えた早めのライフプランの作成が必要になってきます。
幾つかの仕事を紹介しますので、興味のある仕事があるか、確認してみてください。
動物に関わる仕事
獣医師
獣医師になるためには農林水産省が実施する獣医師国家試験に合格する必要があります。受験資格として獣医学の正規の課程(6年制)を卒業もしくは卒業見込みであることが必要です。
・小動物専門の臨床獣医師は動物病院でペットの診療行う獣医師のことです。一般的に獣医師と言われてイメージするのはこの仕事でしょう。
・大動物専門の臨床獣医師は動物園、水族館、競馬場で大型の動物を診療する獣医師のことです。
・国家公務員としての獣医師は厚生労働省や農林水産省で働きます。海外から輸入される食品や動物などの病原菌のチェックする仕事です。
・地方公務員としての獣医師は各都道府県の施設などで活躍している獣医師をいいます。「道路にイノシシが倒れている」などのトラブル対応や狂犬予防の予防接種などを行います。
2023年2月14日実施の獣医師国家試験の結果(農林水産省発表)
受験者数 1,254人(新卒者993人、既卒者242人、その他19人)
合格者数 877人(新卒者805人、既卒者67人、その他5人)
合 格 率 69.9%(新卒者81.1%、既卒者27.7%、その他26.3%)
動物看護師
愛玩動物看護師は2023年2月19日に第一回目の国家試験が行われたばかりの新しい資格です。愛玩動物看護師の資格があれば、獣医師の指示を受けて採血や投薬、マイクロチップの挿入など、比較的危険の少ない獣医療を行うことができるようになります。法律で、愛玩動物看護師は「診療の補助、愛玩動物の世話その他の愛玩動物の看護、愛玩動物を飼養する者その他の者に対する愛護及び適正な飼養に係る助言等を業務とする」と定められています。
そのため、愛玩動物看護師以外の民間資格である「動物看護士」などの資格では、「動物のお世話や飼い主さんへの助言」などは可能ですが「診療の補助」はできません。また「動物看護師・動物看護士」などといった、診療補助ができるような印象を与える名称を名乗ることもできなくなりました。
2023年3月17日一般財団法人動物看護師統一認定機構発表の国家試験の結果
受験者数 20,798人(既卒者・在学者11,259人、現任者9,539人)
合格者数 18,481人(既卒者・在学者9,712人、現任者8,769人)
合 格 率 88.9%(既卒者・在学者86.3%、現任者91.9%)
※国家試験受験のためには3年制以上の大学・専門学校などの養成校の指定学科で学ぶ必要があります。多くの2年制課程の学科は3年制にリニューアルされましたが、一部2年制の学科も残っています。2年制では国家試験の受験はできませんのでご注意ください。
トリマー(ペットの美容師)
トリマーの国家資格はありません。そのため、資格なしでも働くことはできます。
しかし、トリマーには専門的な知識や技術が必要とされるため、民間の団体が認定するトリマーの資格を取得すると良いでしょう。
トリマーの養成は主に専門学校で行っており、複数の民間団体のトリマー資格のどれか一つを目指すことが多いようです。トリマーの資格にはA級・B級、1級・2級などのランクがあることが多く、修業年限やトリマーを専門に学ぶかどうかなどで認定ランクが変わります。トリマーの勤務先はペットショップや動物病院がほとんどです。
仕事内容は勤務先によって様々ですが、動物のお世話や商品の管理なども行う場合が多く、トリミングの仕事だけをすれば良いというケースは少ないようです。トリマーの仕事だけをしたいという人は、数年の経験を経て独立してトリミングショップを開業するなどの方法もあります。
動物飼育員
動物園や水族館で動物のお世話をする仕事になります。
この仕事には定期的な求人はありません。そのため、求人情報をこまめにチェックする必要があります。また、養成校に通う、アルバイトとして勤務を重ねるなどをして、人脈を作り正社員登用を目指すことも必要になります。また、民間でなく公営の動物園などの施設での勤務を希望する場合は、公務員採用試験を受ける必要があります。(公営施設が運営を民間委託している場合は公務員ではないので、公務員試験を受ける必要はありません)
また、施設によっては「獣医師」資格を持っていることが採用条件になるなど、ハードルが高いケースもあります。なりたい人が多く採用枠が少ない仕事のひとつといえます。
ドッグトレーナー
ドックトレーナーは犬に社会性を学ばせるためにトレーニングを行う仕事です。いわゆる「家庭犬訓練士」を指します。ドッグトレーナーとして働くのに特別な資格は必要ありません。しかし、お客様の犬のしつけをするためには、しつけに関わる知識に加えて犬の生態や特徴、栄養学、食事、病気に関わる知識や技術を学ぶ必要があります。そのため、専門学校などの養成施設でドッグトレーナーとしての資格を目指す人が多いようです。
犬のしつけ教室・ペットショップなどが、主な就職先となります。
※ドッグトレーナー養成の学校でも警察犬・盲導犬等のトレーナーの勉強もできるところがありますが、これらは求人の少ない分野なので、注意してください。日本各地にある訓練所の採用を目指すことになりますが、動物飼育員同様、定期的な求人がない分野なので求人情報を見逃さないようにしましょう。
なお、警察犬は各都道府県警の鑑識課の所属となりますので、警察官(鑑識)の採用を目指す方法もあります。
ペットショップ販売員
大型のショッピングモールやホームセンターの中には必ずといっていいほどペットショップが入っています。ペットショップ販売員になるために必要な資格はありませが、動物や販売に関わる資格を持っていると就職の際に有利になります。
店内にペット系の学校のイベント情報が張り出されていることがありますが、その学校の卒業生が働いているなど、ペットショップと学校の間に深い関係があることを示しているので、働きたいショップが決まっている場合は参考にしても良いでしょう。
ペットショップ販売員の仕事内容は主に接客、販売、生体管理、商品管理、店舗運営の補助などです。また、扱う動物は店舗によって様々であり、犬や猫などの哺乳類から鳥類、爬虫類、両生類、魚類(熱帯魚)、昆虫までとても幅広いです。
ペットシッター
ペットシッターは、お客さまにとって「家族同然」であるペットの命を守るという重要な役割を担っています。不在にする場合はペットホテルに預けるという方法もありますが、ペットホテルではいつもと環境が大きく変わってしまうため、ペットにストレスを与えてしまうのではないかと不安に思う飼い主も多く、ペットシッターを選ぶ飼い主さんが増えてきました。ペットシッターになるために必要な資格はありませんが、未経験者が最初から一人前のペットシッターとして働くことはほぼ不可能です。
飼い主さんが留守にする時に代わってペットのお世話をする仕事なので、犬や猫やウサギなど、よく飼われている動物の習性を知ることは欠かせません。また、ペットがケガや病気をした際の看護方法や動物をケアする方法も理解しておく必要があります。
そのため、健康管理やしつけの能力があるペットシッターの需要は高いといえます。飼い主さんに信頼して委託ためにも愛玩動物飼養管理士、家庭動物管理士などのペットシッターに関連する資格を取得しておくと良いでしょう。
ペットシッターとしての就職は、派遣会社に登録してお客様の家を訪問する形が多いようです。その場合は収入も歩合制になります。また、個人でペットシッターとして開業することもできます。
愛玩動物ってどんな動物?
可愛いペットは「愛玩動物」だと思いますよね。
でも法律上は必ずしもそうではありません。変な感じもしますが法律で定める「愛玩動物」は「犬、猫、その他政令で定める動物」となっています。
それではその他政令で定める動物って何?となると思いますが、きちんと定められていて「愛玩鳥(セキセイインコなどオウム科全種、文鳥などカエデチョウ科全種、カナリアなどアトリ科全種)」になります。
・・・つまり、ウサギもカメもトカゲも熱帯魚も、どんなに可愛がっていても愛玩動物には含まれません。
「愛玩動物だろうがなかろうが呼び方が違うだけなら関係ない」で済めば良かったのですが、法律で「愛玩動物」の定義に含まれない動物についても、愛玩動物看護師は、診療の補助を除く業務(看護、愛護・適正飼養支援等)を実施することは可能」とあるように、愛玩動物以外の動物に関しては診療補助が禁じられてしまっています。
愛玩目的で飼育しているかどうかは関係なく、動物種を指定しているため、ややこしいことになってしまっています。